日韓アイドル右往左往

こっちの沼で待ってます

ダブルミンツ@虎ノ門

 平日夜、東京虎ノ門ポニーキャニオン本社にて行われた映画「ダブルミンツ」のトークイベントのお話です。

 あまり広くない落ち着いた照明の会場には、高めのミニステージの前に70ほどの椅子が並び、劇中に使われたチェロの音色が重苦しく流れていて、 どこか神妙な面持ちで主役の登場を待ちました。 茶色いセットアップに艶のある赤茶色のレザーシューズ、丸メガネパーマという出で立ちで登場した本日の主役。 黒いカーテンの向こうから出てきたとき、一瞬女の子が来ちゃったかと錯覚するような可愛らしさがあり、一気に場が華やぎました。

 映画「ダブルミンツ」発売記念と銘打ったトークイベントでしたが、市川光央へのアプローチ法やお気に入りのシーンの話題から 俳優・田中俊介の今後まで、幅広く話してくれました。

 田中推しを自称しながらソロイベントも俳優としての俊さんも初で、意外に思うことの連続だったのですが、 まず、こんな饒舌なところを初めて見ました。 ボイメンの兄貴分といえば間合いを見て間合いを見て、本当にここぞというところでしか出てこない腰の重いイメージだったので、表情をくるくる変えながら軽快に淀みなく喋る姿が新鮮でした。あの深夜ラジオでログアウトしたのかと見失いがちな寡黙さは無く、時に冗談を挟みつつ、ヤマやオチのある語り口がとても聞きやすかったです。

 そんな俊さんのもとに集う人たちの空気もまた素敵でした。 芝居への姿勢が語られる時には息を飲んで、撮影当時の笑い話にはあたたかく微笑んで、 近過ぎず離れ過ぎず推しを見守る雰囲気は居心地の良いものでした。

 また、さらに意外だったのが謙虚というより自己評価低すぎなんじゃないかと思うほど控えめな様子です。ボイメンらしいギラギラした貪欲さは見当たらず、 「ゆくゆくは自分で映画を撮りたくないか」の問いには、「いやぁ〜俺バカだから…どうかな…無理だと思います」 と自分を律するように答えていました。

司会がおだてると恐縮して段々小さくなり、プライベートの過ごし方を聞かれても「…まっすぐ家に帰って映画見てるかなぁ」と言葉に詰まったり、バラエティで見る脱ぎたがりな男と同じ人物とは思えませんでした。 どこで言ったか、「光央みたいにちっちぇー男なんすよ」という言葉が耳に残っています。 俊さんが「気の小さい」光央像と似ているかは分かりませんが、何の償いなのか戒めるように自制して、自分を大きく見せないようにするところは以前から感じていました。特典会での起伏の少ない安定感と掴みどころのなさは、こういうストイックな精神性から来るものなのかなと思います。

俳優としての船出

 ダブルミンツに出会わなければ、プロレスラーみたいと言われた自慢の筋肉を削ぎ落として職質されるほど危ない目つきになることも、毎日コメダ珈琲でアイスコーヒーのジョッキ片手にウンウン唸ることも無かった。 完成後、数ヶ月に渡っていろんな劇場で上演され、DVDがレンタルショップに並び、多くの人の知るところとなってもなお、「まだ終わらせない、海を渡りたい」と次々に目標が見えてくることも無かった。 この作品をきっかけに仕事の幅が広がるのはもちろん、おそらくこの先長いであろう俊さんの俳優人生で、幾つになっても立ち帰れる「初心」を手に入れたのかなと思います。

 今後やってみたい役柄の話になったとき、韓国でヒットした「ベテラン」という映画が挙がりました。所謂イケメン俳優のユ・アインが非人道的な悪役を演じて話題になり、韓国アイドルがパロってコントしたりしています。ユ・アインの演技について「今の俺にはとても出来ない」とこぼしていたけれど、えげつないことを平気でやってのける芯から悪人の俊さんの姿も、いつか見てみたいと思うのでした。

 トークイベントの最後、遠慮がちにはにかみながら「これからも付いて来てな…」と言う俊さん。 まさに颯爽と歩み始めたその背中を見失わないように、これからも付いていきたいです。